にいや、2009年ベスト映画10本+3本

遅ればせながら、『ダンプねえちゃん』公開おめでとうございます。告知くらいすれば良かったですね。藤原さんすみません。
実は『ダンプ』初日の土曜から、『人喰山』英語版の作業が本格的に始まりまして。ずっとパソコンの前に座り込んでいたのです。
いやあ字幕付け、難しいですね。『人喰山』は語りで進行しますから、普通の台詞字幕じゃ駄目なんですよ。
しかも日本の文化や風土をネタにしたギャグが多いので、そのまま訳しても意味が伝わらないので、意訳……というより改訳をしまくってます。英語に詳しい方が字幕を読みながら台詞を聞かれると「なにこれ?」と呆れる事請け合いです。

さてさて、いつの間にか年末。傑力ブログのタイトル部分も、異常に大きな看板画像が掲げられています。 皆さん大丈夫でしょうか。モニターからはみ出してませんでしょうか。うちはしっかりはみ出してます。
実は、「傑力珍怪年末特別企画」として「今年の映画ベスト10」を選ぼうという事になりました。
傑力メンバーが、それぞれ今年観た映画から自分のベスト10をご報告しつつ、除夜の鐘を聞いたり、年賀状を書いたり、餅つきをしたり、夜逃げをしたり、正月出勤をしたり、と言う素敵な企画です。では、トップバッターで、にいやから。

ええとですね。僕は映画に順位なんかつけられないので、順不同で。それと、傑力珍怪作品がずらずら並んでも仕方ないので、ここには入れません。もちろんテレビで観た映画、DVDで観た映画、その他色々入り込んで来ると思います。さらに、傑力メンバーで一緒に観に行った映画も多いので、結構かぶるかも。それとそれと、実は『傑力珍怪』で滅茶苦茶忙しかったので、劇場で映画を全然観てないのです。ベスト10本は厳しいかも……。では、行ってみましょう!

・『ダンプねえちゃんとホルモン大王』  藤原章監督

そりゃもう、まずはこれを入れなければ。画像も特別大きくしておきました。
昨日の記事で大畑君が書いてくれてますけど、これは立派な超大作娯楽映画なのです。一見バカ映画、パロディ映画に見えるかもしれませんけど。藤原監督が愛する怪獣映画やクンフー映画や人情喜劇を、本気で作り上げようとした情熱の塊なのです。
感想は以前書いたので、こちら→  [ゲスト作品紹介] - 傑力珍怪  の記事をご覧下さい。

*12/28(月)は、藤原監督+高橋さん+僕とでトークショーです。と言っても、にいやは司会進行役ですけど。

『ダンプねえちゃんとホルモン大王』
(HPはこちら
http://danp.iinaa.net/)

12/19〜 ロードショー
会場:渋谷アップリンクX 20時50分より
http://www.uplink.co.jp/x/log/003265.php

宮川ひろみさんのHPはこちら
http://miya.himegimi.jp/m.htm



・『スター・トレック』  J・J・エイブラムス監督

うわ、今年観たハリウッド映画は、これと『007 慰めの報酬』だけ。『007』つまんなかった。
スター・トレック』は良くできてました。カークがバカ過ぎという文句もあるけど、今回の主役はスポックでしたからね。
オリジナル作品を土台にして、もの凄く複雑なプロットを淀み無く語るシナリオの上手さに感動。屋外ロケはカメラを振り回し過ぎてて感心しなかったけど、セット撮影になったら見事なものでした。主要キャストの顔は、オリジナル版とはあまり似て無いのに、なぜかそっくりに見えて来る不思議。オリジナルを良く研究してると言う事でしょう。
しかし、まさかウフーラをヒロインにしてスポックと絡ませるとは思わなかった。見事なリメイク。



・『牛乳屋フランキー』 中平康監督

これは間野君と被るでしょうね。阿佐ヶ谷で観ました。僕の自主作品に『牛乳屋フランケン』というのがあるんですが、それのタイトルの元ネタ……なのに、見るのは初めて。フランキーが零細牛乳店を建て直そうとする奮闘を描く。中平康が自作の『狂った果実』のパロディも入れ込みながら、ミュージカルシーンあり、不条理夢あり、ドタバタありで描く傑作コメディ。
小沢昭一がセコくって存在感あって良かった。牧場でピクニックするシーンの幸福感は尋常ではない。一種のユートピア映画。



・『喜劇 男の子守唄』  前田陽一監督

↑これしか画像が無い……。
これは浅草新劇場に観に行った作品。おお、フランキー二連発だ。
一緒に行ったのは浅草初体験の間野君。まず二階席に行ってみたら……いや……まあ……素晴らしい事が……色々と……。あそこもやはりユートピアですね。
で、この作品は空襲焼け跡世代のフランキーが、現代社会(1972年の日本)に適応出来ず、自分たちの心の故郷だった「焼け跡」を取り戻すまでの物語……と言って良いのか?
パンパンガール姿の倍賞美津子ミヤコ蝶々が素晴らしい。
ラストシーンのフランキーの台詞「あれは25年(だっけ)前の俺だ……」には戦慄しました。
この作品で、ちょっとした前田陽一ブーム。傑力メンバーと『スチャラカ社員』を観に行って(これも松竹芸能総出演で凄かった)、さらにビデオで『喜劇 家族同盟』『喜劇 命のお値段』『進め!ジャガーズ 敵前上陸』を観ました。しかし、前田監督のテーマ「疑似家族」てのは、どの作品にも一貫してますね。昔、大井武蔵野館で観た『虹をわたって』もそうでした。前田監督、大好きです。



・『ひばり・チエミの弥次喜多道中』  沢島忠監督

これはDVDで観ました。そりゃもう、天才歌手二人が歌って踊る最高の娯楽映画ですよ! 見た事無い方はレンタル屋にGO!
尺は85分。そんな短時間に一流役者さんがゴロゴロ出てて、豪華なセットに豪華なロケに。そりゃ面白いに決まってますわな。千秋実の頭のコブは必見。
ちなみに、『男の子守唄』は88分。映画はそのくらいの尺が良いですね〜。



・『ガンマン大連合』 セルジオ・コルブッチ監督

おお、感動の『ガンマン大連合』 ! これは友人からDVDをプレゼントされたのです。
あのラスト、身震いする程の名台詞、「やっちまおうぜ、同志たちよ!」 これは「リターンズVOL.2」のコピーに使わせてもらいました。登場人物はバカばっかり、純粋でエネルギーに満ちあふれ、彼らの行為そのものが映画を形作る。
セルジオ・コルブッチ監督は、僕の最も尊敬する監督の一人です。
しかし、僕はどうしてもペンギン=フランコ・ネロ黒沢清さんに見えてしかたないんですよ。



・『火の鳥』  市川崑監督

これは高校生の頃、「絶対観るもんか」と心に誓ってた映画ですね。
「なんだあのアニメーションは」「なんだあの特撮は」「なんだあのメイクは」「市川崑、なにやってんだ!」と、手塚ファンの高校生は予告を観て大激怒してたわけです、が。
あれから30年。いい加減年取ってこだわりを無くしたオッサンが観てみたら。あら、なんと、これがまた、結構面白かったんですよ。
確かに、あちこち無茶苦茶なんですが。さすがに役者さん達は皆良いし、それなりの大作なので撮影も良い。
なにより、手塚治虫のマンガ的な展開をそのままやろうとしてる市川崑の作戦に、僕は感動してしまったのです。
普通「黎明篇」をやろうとしたら、どこかの部分だけをピックアップして映画にするでしょうけど。市川崑は「黎明篇」全てを、強引に120分に詰め込んでいます。手塚治虫のマンガ的な楽屋落ちまでそのまま映像化。
こりゃ無茶だ。

でも、確かに部分だけを抜き出して映画にすれば、映画のまとまりは良くなるだろうけど『火の鳥』では無くなる。
火の鳥』は、歴史を背景にした群像劇ですから、時間と人間の大きなうねりそのものが本当の主役な訳です。
市川崑は、、無理を承知でそれをやっている。まあ、実際無理なんですけど……。
しかし観終わってみたら、なんだか本当に『火の鳥』そのものを観たような、奇妙な(本当に奇妙な)感触が残るのでした。

それと、やはり30年前の映画ですから役者さん達が皆若い。これを観た数日後、大原麗子さんが亡くなってショックでした。
火の鳥』での大原麗子さんの登場シーン。病気で寝てる娘という設定で、カメラは全身ショットで顎の方から。これが素晴らしい。「この美少女は誰だろう?」と、しばらくは分からなかったのです。大原麗子さんをああいう角度から撮ったら、この世に存在しないような、まさにマンガのような美少女に映る……と言う事を、市川崑はやってのけているわけです。
他にも由美かおるさんのお多福メイクも凄い。
原作には登場しない美少女、オロというキャラがこれまた良いんですが。いったい誰が演じてるのか。ちょっと見ただけでは分からない。なんとこれが吹雪ジュンさん(↑のモノクロ写真参照)! 市川崑監督、やはりキャスティングが上手いです。
とまあ、実は実写映画として、様々な見所があったんですね。

もちろん、やっぱり、普通の『火の鳥』ファンにはお勧めしませんけど。



・『嵐の三色旗 〜二都物語〜』  ジャック・コンウェイ監督

これもDVDで見ました。本屋さんの安売りDVDコーナーでも売ってると思いますし、ヤフオクで200円くらいなので是非!
原作はもちろんディケンズの古典。フランス革命を舞台に、一人の女を愛する二人の男の運命を描く。
まあ『ベルバラ』なんかの元祖みたいなものですね。フランス革命の、バスティーユ陥落のシーンが凄い。
やはり1930年代の映画は金かかってますわ。役者さんも顔が凄過ぎ。



・『Gメン'75 BEST SELECT Vol.2』

はいはい、ネタ切れでテレビ作品の登場です。
『傑力珍怪』ゲストトークで、切通理作さんと原田浩さんが熱っぽく語っておられた『Gメン'75』の「沖縄編」がこれだ!
つたやでレンタルしてたので見ました。凄い凄い。これ、子供の頃見てたはずだけど、覚えてなかったですね。

収録作は……。
59話: 東京−沖縄 縦断捜査網
60話: 暑い南の島 沖縄の幽霊
61話: 沖縄に響く痛恨の銃声
82話: 刑法240条 強盗殺人罪

この59〜61の三本が、噂の「沖縄編」です。
たぶん僕が覚えてないのは、三話連続だったからでしょうね。たいてい間とかラストとか、見損ねるんですよね〜。
強引な展開、無茶苦茶なキャラ達の行動、底なしの不幸、そしてラストの……。
昔はこんな作品がゴールデンタイムのお茶の間に流されてたんですね。テレビドラマがどれほど凄い作品を作り出していたか。是非、この「沖縄編」でご確認ください。

誰だったか、「テレビ界には名脚本家は生まれても、名カメラマンは生まれなかった」なんて書いてまして。
「そういうもんか」と思ってましたが、いやいや。
もちろん映画のようなカメラ=大画面でうっとりするような美しい画を撮る事はできないでしょうけど、テレビのカメラマンはテレビの画面と作品内容に合わせた撮影をしてるわけです。
この「沖縄編」の撮影は見事ですよ。藤田美保子と河内民生が会話するシーンで、役者さんの演技を奇跡のような超絶テクニックで追い続けます。普通に見てたらなんとも思わないでしょうけど、あんな撮影できるもんじゃありません。

それと、「刑法240条 強盗殺人罪」も必見。大滝秀治が冤罪をはらすため戦う問題作。大滝秀治の孫役のお姉さん(当時よく見た人)と、婚約者(円谷作品、トリプルファイターの一人)が良い。テーマやストーリーも良いけど、それを表現する役者さんに年齢の幅があると言う事はとても大切な事ですね。



・やっと10本目!
もうネタが無い。
と言う事で、『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』にちなんで(『復活篇』は観に行かない)、パチンコヤマトのCG映像。これは素晴らしい。



最後に。
本当は自主映画も入れたかったんだけど、そうすると10本からはみ出すので。
フィニッシュに今年見た自主映画の傑作をずらっとご紹介。

『収穫』  粟津慶子監督  「桃まつり」の一本。女子高生の性的妄想をテーマに描く、学校の怪談。これは傑作!主演の女の子が変で可愛い。

『トゥエンティーズのセブンティーン』」  藤岡晋介監督  立教大学映像身体学科の作品。ダメダメなストリートミュージシャン二人の友情を描く。見てて本当に心に痛みが走る、実はハードな青春映画。

『見知らぬガレージ』  小泉恵美子監督  美学校映画祭の一本。不思議な町に迷い込んだ女性の、混乱と旅立ちを描く問題作。まるでカフカの小説を読んでいるような不安感に襲われる。自主映画でなければ作れない、不格好だけど真摯な作品。

やった、終わった!