11月22日(日)矢澤利弘さん、高橋洋さんを迎えて

どうも、伊藤です。11月22日に盛況のうちに幕を閉じた傑力珍怪映画祭リターンズvol2の模様を余すことなくリポートします!

なんといってもこの日の目玉は上映後のトークイベント。
「Jホラーとアルジェント、血で描く童話」と題してゲストの方をお二方お迎えしました。


ひとりは来夏テアトル系で公開予定の『恐怖』を撮られた映画監督の高橋洋さん。

もうおひとかたは世界最高峰のアルジェント研究本「ダリオ・アルジェント 恐怖の幾何学」の著者、矢澤利弘さんです。

高橋さんは傑力メンバーの伊藤、間野、大畑の映画美学校時代の講師であり、影響を受けた映画作家の一人でもあります。

トークは拙作「魔眼」の話から。製作過程のシナリオ段階から色々とお世話になっていた高橋さんからは「シナリオを読んだときから、伊藤君は手応えを感じていたと思う。見えるはずのないものが見えるという表象不可能なモノを作劇に取り入れることがこれから重要な問題になる」
矢澤さんからは「全てを説明しない、観客の想像に委ねる部分があって、そこが魅力になる」

自分の作品について語られ緊張のあまり用意してもらった水をこの時点で飲み乾してしまいました。
ここから強引に話をアルジェント方面に転換。

お二方とアルジェントの出会いについて聞く。
高橋さんは『サスペリア』を観て、正直「なんだこりゃ」という印象。その後、初期作品のスリラーを観直して超絶テクニックの持ち主だったと再認識。『シャドー』に触れ、意味のない移動撮影をやってもいいんだと目から鱗が落ちたという。

矢澤さんは『サスペリア』はロードショーを見逃したが、同級生から『サスペリア2』の噂を聞きつけ、観たところ衝撃を受けて、ハマってしまったということです。

矢澤さんはアルジェント研究のウェブサイト(http://jmedia.tv/argento/topj.html)を運営していらして、偶然、高橋さんが「サスペリア」の語源を探すうちに行き着いたといいます。

サスペリアの語源となったトマス・ド・クインシー著「深き淵よりの嘆息」。魔女三部作の元ネタ。例の三人の魔女が登場する。

高橋さんの脚本作品『インフェルノ蹂躙』とアルジェントの『インフェルノ』の共通点を探す試みもありました。高橋さんの脚本作品『インフェルノ蹂躪』の盗聴盗撮のアイディアの源流はフリッツ・ラング『M』かもということでアルジェントも敬愛していたラングつながりでオチがついたようなついていないような・・・。
ともかく、お二人のアルジェントや映画に対する造詣の深さに圧倒されて、内心焦った司会の私は知ったかぶりで相槌をうちつづけていました。

高橋さんもお読みになった矢澤さんの著書「ダリオ・アルジェント恐怖の幾何学」の脅威の情報量と的確な分析には本当に吃驚します。30年来アルジェントを追いかけて大変な労力をかけて書かれたアルジェントに対する愛と執念にあふれた素晴らしい本です。
矢澤さんはこの本をアルジェント本人に渡すためにイタリアに行かれ、その時アルジェントと撮った写真を見せていただきました。矢澤さんのリクエストでアルジェントに黒皮手袋で首を絞めるポーズをしてもらったのですが絞め方がプロ級で本当に落ちそうになったらしいです。アルジェント、危ない奴です。

そんなこんなで唯一無二の映画作家、アルジェントの魅力を語るには1時間じゃ足りず、あっという間に時間が来てしまいました。
アルジェントのような強烈な個性を持った映画は好き嫌いが分かれやすいですが、アルジェント本人いわく「悪夢を映画にした」というその想像力の強度は一度、観ると忘れがたいものです。
こんな映画をもっと観たいものですねと3人意見の一致を確認して、トークイベントはお開きとなりました。

本当に高橋さん、矢澤さん。楽しい時間をありがとうございました。ご来場いただいたお客様にも感謝の意を表しつつこのレポートを終わります。 それではまた会う日まで。
 
伊藤淳